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パイプ加工FAへのプログラム自成式APC制御の応用

弊社の技術紹介がプレス技術 2021年7月号に掲載します。

FAシステムの拡大期と問題点


世界的なコロナ禍の経験を通じてもの作りのFA 化、省人化、省エネ化、多品種化などが中小企業においても急速に進むと思われる。各種FA生産システムの基本構成は、機械本体(切削加工部品と市販部品、駆動源など)と制御装置(動力盤、操作盤、監視盤、センサ、通信など)がいずれの機械であっても共通の技術母体である。機械本体の設計製作は、2 D/3 D CAD、CAD/CAM、各種切削加工機、3 D 計測機、シミュレーションソフトなどで自動化、省人化が極限に近くにまで進み計画生産が容易になってきている。

一方、制御装置の設計製作は、PLC、CNC を中心とする機械制御用の組込みプログラムの開発手段が開発者のスキルに100% 依存しており、ほとんど進化は見られない。プログラム開発者が機械動作を機械設計者から聞き取って、曖昧表現しかできないIEC 国際規格のフローチャートで作画し、制御用の最終言語までの工程をすべて技術者のスキルで非効率な開発を行っており、極端な技術者不足に陥っている。
近年、曖昧なIEC 国際規格のフローチャートに代わる完璧な表現ができる独自のYOGO 式動作チャートを開発した。このYOGO チャートの開発で10 年来の目標であった「制御プログラム自動生成式APC 型CNC 制御装置」を完成させ、特許を取得した。このAPC で制御プログラムを自動生成させた結果、従来比1/10 程度の時間で開発が済むことが分かり、一気に技術者不足が解消した。

今後は、現在生産販売しているパイプベンダー類の制御をAPC 制御に置き換えるとともに、パイプ加工のFA 生産システムを積極的に受注し、業界を牽引していきたいと考えている。やがては他分野のFA インテグレータや、古いFA 生産システムの制御系のリニューアル分野にも進出したいと思っている。
なお、今回開発に成功したAPC 型CNC 制御装置の単体マーケットは非常に大きいので、量産や世界販売が得意な大手企業と技術・販売・資本提携などを通じて世界に普及させたいと考えている。


今後のパイプ加工用FA生産ラインに必要な要素マシン


1.FAに便利なロボット式パイプベンダーの開発

①パイプの曲げ加工製品は、端末加工や中間に部品が取り付けられるケースが多い。こうした製品の工程は、直管のうちに端末加工や中間部品を取り付け、最後に曲げを行うことで汎用性と効率が両立するFA 生産ラインを構築することができる。
②従来型のパイプベンダーで①の生産ラインを構築すると曲げ加工時に干渉が多く、汎用性が犠牲になってしまう(図1)

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③曲げ時の干渉を減らす為に、右曲げ/左曲げの金型選択ができる曲げヘッド(SW型:図2)を持ったロボット式パイプベンダーが有効。

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④T-WIN 型ロボットベンダー(図3)は、φ26までの曲げ加工用SW 型曲げヘッドをロボットに持たせてローディング、干渉回避、送りひねり、アンローディングを行うロボット式パイプベンダーを開発。

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⑤太物用G-WIN 型ロボットベンダー(図4)は、φ30、φ50、φ60 用の曲げ加工用太物SW 型 曲げヘッドを地上に設置し、パイプハンドをもたせたロボットでローディング、送り・ひねり、干渉回避、アンローディングを行うロボット式パイプベンダーを開発。

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2.非接触3D測定機

 ①FA 生産ラインで多品種の自動加工ができると、次のテーマとして多品種製品の品質保証対策が重要になる。従来のタッチ式三次元測定機やメカ検具に代わる汎用性を持った測定機として光学式非接触3 D 測定機が主力となる。当社では20 年来、「面」光源式の3 D スキャナを開発し、パイプ測定やプレス金具の測定に応用してきた。

 ②協働ロボット式測定機(図5)は、最近の人に安全な協働ロボットの先端に3 D スキャナを取り付けたロボット式測定機で、小物のパイプや金具類のインライン測定用として開発した。

   測定仕様
測定空間/ショット
:縦300×横300×深度200 mm
測定テーブル:1,000×1,000 mm
測定精度:±0.1 mm 以下である。
測定時間/ショット:2 秒以下
パイプベンダーへの三次元形状修正フィードバック機能を持っている。

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③遮光BOX 式非接触三次元パイプ測定機 細物から太物長尺パイプの曲げ加工製品を全数測定する場合、工場内の照明を半透明のフィルムで遮光すると、測定データが安定し、高速測定ができる。図6 の開口部の遮光フィルムの開閉とロボットでのワークの投入・取り出しを同期させてインラインで無人測定を行う。

測定仕様
測定空間:縦1,000×横2,000×深度350 mm
測定精度:±0.15 mm 以下
測定時間:6 秒/1 本(遮光フィルム開閉含む)

20210617-プレス記事ー図6.png


3.パイプ干渉シュミレーションソフト

①パイプ加工のFA ラインにおいてどんな種類のパイプ加工が流せるかの判断は、パイプ加工のベテランか、図7、図8 のシミュレーションソフトに頼らざるを得ない。当社では、FA ライ
ン用のロボットベンダーのシミュレーションソフトと試作非量産用の従来ベンダーのシミュレーションソフトの開発を順次進めている。
②シミュレーションソフトの仕様
1)TWIN-20 型シミュレーションソフト
太さ:φ20 mm 以下
長さ:4,000 mm 以下
干渉箇所:色表示する
金型交換は3 D データで行う
曲げ速度:1 速~5 速画面入力
曲げ形状:XYZ 画面入力
曲げ時間:仮想時間を計測する
干渉回避:割込み機能あり
2)ECO-35 型シミュレーションソフト
太さ:φ35 mm 以下
長さ:2,000 mm 以下
干渉箇所:色表示する 金型交換は3 D データで行う

曲げ速度:1 速~5 速画面入力
曲げ形状:XYZ 画面入力
曲げ時間:仮想時間を計測する
干渉回避:割込み機能あり

20210617-プレス記事ー図7.png20210617-プレス記事ー図8.png


4.制御プログラム自動生成機能付きAPC型CNC制御装置の開発

①1963 年、制御装置の専用メーカーとして創業、制御装置の汎用化を目指して1970 年に順序制御式用シーケンサ(PLC)ロジエースを開発。
②1974 年、4 bit マイクロCPU によるフィードバック式CNC 制御装置を開発し、生産設備メーカーに転出した。その1 号機がCNC パイプベンダーで1977 年、日刊工業新聞社より日本十大新製品賞を受賞した。以来、時代の進化に応じた制御装置を自社開発し続け、各種生産設備に応用して順調に成長してきた。
③ 1980 年代に入って、自社開発のCNC 制御装置が高級制御で能力不足をきたし、時には、米デルタタウ社の高級制御用ピ―マックボードを応用してトヨタ自動車などから依頼を受けた難度の高い制御を必要とする生産設備の開発であっても、技術者の開発スキルを高めて乗り切ってきた。一方でPLC 制御やCNC 制御のプログラムの開発を行う技術者が辞め始めて人手不足が慢性化してきた。
④ 2000 年頃からプログラム開発を行う技術者不足を根本的に補う手段として、プログラムを自動生成させる制御装置ができないかと検討を重ねたが、遅々として進まなかった。

⑤2015 年頃にプログラムを自動生成させるための壁として、IEC 国際規格で提示している機械動作を表すフローチャートの表現力の不完全さを技術者のスキルでカバーしていることに原因があると気が付いた。
⑥機械単体の動作やFA システムの動作を機械設計者自身で完璧に表現できる新しい動作チャートの開発を目指した。2017 年にPLC+CNC オプション(ラダー言語)と、CNC 制御(C 言語)をC 言語で統一できる動作チャート(特許取得済YOGO チャート)を開発した。


5.パイプ加工用FA生産システム(展示モデル)をAPC制御装置による一括制御

①展示モデルの機能展示モデル(図9)は、定尺切断されたパイプをローダに載せ、自動で端末加工、パイプ曲げ加工、形状測定を行い、パイプ設計CAD データと比較して誤差があればパイプベンダーにフィードバックして自動補正を行い、ラインを止めることなく加工を続けられる。

20210617-プレス記事ー図9.png
②展示モデルの構成
(1)APC 型操作盤
操作盤1 台で、中央監視画面と、※(2)~※(5)の構成機械専用画面を切り替えてデータ入力などの操作をする。異常が発生した場合は、自動で異常が発生した機械の異常画面をポップアップ表示する。
(2)10 本整列台付きパイプローダ
人手で整列台に並べたパイプを自動で端末加工機に投入し、端末加工が完了した後、そのパイプをパイプベンダーが取りに来て曲げ加工を始める。

(3)端末加工機
パイプ末端を高精度加工するために、ワークの加工形状にメス型加工した金型クランプにパイプ先端の加工部をクランプし、オス型加工したパンチをCNC 制御で数度打ち込むことで、フランジ
加工、フレア加工、拡管加工などの端末加工を金型精度で行う。
(4)SRO シングルロボットベンダー
固定チャックにクランプしたパイプをロボットの先端に取り付けた曲げヘッドに通し、入力した加工データに従ってロボットを制御して、送り・ひねり・曲げの高速・高精度な加工を行う。
(5)協働ロボット式非接触3 D パイプ測定機
曲げ加工が完了したパイプを協働ロボットに取りついている3 D スキャナ上のパイプハンドでSRO のロボットからパイプを受け取り、測定台に置き、3 D スキャナを1 ショットごと移動させて測定を行う。測定データと設計CAD データを比較し、許容誤差をオーバーした場合はパイプベンダーに修正データを自動転送して、次のパイプ加工に反映させる。


6.機械4台の展示モデルFAシステムを一括制御するAPC型CNC制御装置

①機械4 台の一括制御式YOGO 動作チャートを図10 に示す。

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②段取りB表画面(図11)の★印の記号とチャートの関係性

APC 型操作盤の標準画面として、設計値A 表画面、段取りB 表画面、タイマーT 画面、曲げPRB 画面、割込みINT 画面、モーションソフトライブラリS 表(標準ソフト20 種収納)など12画面用意している。図11 のパイプベンダー用標準画面は、付属の『画面カスタマイズソフト』で文字と縦横のマトリックス数を簡単に変更可能である。YOGO チャートは、ロボットベンダーの出荷時にAPC 操作盤内のメーカー用メモリに保存してある。ユーザーは、B 表画面内★印下記号に対応した段取り設定値に変更してクリックすると、YOGO チャート経由で制御用機械語内の旧設定値を自動的に書き換える。

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③チャート翻訳スクリプトコンパイラ
「YOGO チャート上の各サブユニット駆動源の起動トリガ線の位置・停止トリガ線位置・各種センサのON/OFF 状態記号、★の下で示されている記号」と対応する「設計値A 表、段取りB 表、タイマーT 表、曲げPRB 表、割込みINT 表内の同一記号の下で示されている各数値」を読み取って機械語に自動翻訳して共有メモリに動作順序で保存する。

④高速スクリプトインタプリタ
インタプリタをリアルタイムOS(Windows を高速高精度でリアルタイム化する手段)上で動作させることで、機械4 台(Max モータ64 台、シリンダ1024 本)を同時制御(1 mS 以内)するこ
とを可能にしており共有メモリから制御ソフトを順次読出して、EtherCAT 経由で駆動源の制御コントローラに転送する。同時に駆動源が制御ソフトの指示に従って稼働する。

⑤FA システムの監視機能
APC 型操作盤には各機械の専用画面と中央監視画面が用意され、切り替え式で使える。中央監視画面は、各サブユニットの正常/異常動作を監視(異常が発生した機械がポップアップで自動表
示)、各機械ごとの手動操作、加工データ、加工品番、加工本数などの入力と監視を行う。
⑥APC 制御概要フロー
図12 に制御概要のフローを示す。

20210617-プレス記事ー図12.png